グレースピリオド ― 60日間の出国猶予期間

米国で新たな生活を始めるためには、ビザの取得など多大なる労力を要します。長い道のりを経て、プロセスが無事に完了した暁には、「ようやく米国での新たなキャリア、新たな生活が始められる」と、安堵することでしょう。 しかし、よくよく練られたプランでも、残念ながら、常に期待通りに物事が進むとは限りません。例えば、従業員が新たなチャンスを求めて退職するのと同じように、雇用主はいつでも従業員を解雇することができるわけですから、決して雇用の安定は保証されていません。そこで、今回は、万一解雇された場合、すぐに米国を出国しなくてはならないのかどうか、知っておくべき重要なポイントについて述べてまいります。 2017年1月より、米国移民局はほとんどの就労ビザ保持者に対し、「グレースピリオド」という、60日間の出国猶予期間を認めるようになりました。これは、雇用が終了した瞬間にステータス違反とならないよう、ビザ保持者を保護する目的で設けられた措置です。よって、解雇=即出国、とパニックに陥る必要はありません。 対象となるビザクラス この60日間のグレースピリオドは、全てのクラスの就労ビザ保持者に与えられるものではありません。雇用終了後、短期間の猶予しか与えられないビザクラスもありますので、まずはご自身が60日間猶予の対象であるか、確認してください。 60日間のグレースピリオドが認められている就労ビザクラスは以下のとおりで、H-2B、H-3、P のビザ保持者には 60 日の猶予期間は認められていませんので、ご留意ください。 – E-1、E-2、E-3 – H-1B、H-1B1 – L-1 – O-1 – TN グレースピリオドは、認められた期間につき一度だけ利用することが出来ます。例えば、現在のビザクラスのステータスを延長するためにグレースピリオドを利用した場合、いずれは出国し、改めて入国しない限りは、新たなグレースピリオドの付与対象とはなりません。また、グレースピリオド中に米国を出国した場合は、残りの日数に関わらず、猶予期間は終了します。 ところで、グレースピリオドの期間中に、Form I-94 やForm  I-797 が失効する場合は、猶予期間は60日間ではありませんので、ご注意ください。例えば、Form I-94 やForm  I-797の有効期限日が、雇用終了日から15日後であった場合、猶予期間は60日間ではなく15日間となり、その間にステータスの延長や変更申請、または米国から出国しなくてはなりません。 グレースピリオドの要件 グレースピリオド中も、合法的に滞在することはできますが、米国移民局によって認められていない就労はできません。そもそもグレースピリオドとは、新たな雇用の確保、ステータス延長や変更申請の準備等のために与えられている期間です。よって、60日の間に、以下のいずれかのアクションを起こす必要があり、グレースピリオドの期間終了までにアクションを起こさなかった場合は、ステータスは取り消され、米国に滞在する資格を失います。 新たな雇用主の元で就労するための申請をする 猶予期間が終了する前に、米国から出国する計画を立てる […]

E&Lビザ配偶者の労働許可証 -アップデート-

先日、E、Lビザ保持者の配偶者のための労働許可証について、米国移民局のポリシーが大幅に変更されるニュースをご案内しましたが、ついに2022年1月31日より新ポリシーが完全に導入されました。2002年から施行されてきた従来のポリシーが、労働許可証の有無をめぐる集団訴訟の結論をもって、まさに大幅に変更される結果となりました。 この「変更」とは、以下のとおりです。 E-1、E-2 & E-3 ビザ保持者の配偶者 Eビザ保持者の配偶者が米国に入国しますと、「Class of Admission」のステータスがE1S、E2S、またはE3S (E-1、E-2、またはE-3ビザ保持者の配偶者/Spouse) と表記されたForm I-94が、米国税関国境警備局 (CBP) より発給されるようになりました。このI-94が、現在では、就労資格があることを証明する書類となります。言い換えれば、I-94の期限がある限り、米国での労働が認められており、従来のように、就労するために労働許可証を申請する必要はなくなった、ということです。 重要な注意点は、この新たな表記が含まれているI-94は、2022年1月31日以降に米国へ入国した場合に発給される点です。それよりも以前から米国に滞在しているEビザ保持者の配偶者が新表記のI-94を取得するためには、米国を出国、飛行機で再入国する必要があります。ただし、外国人が海外渡航する場合、渡航規制、入国規制、入国拒否など、あらゆるリスクを考慮しなくてはなりません。単にI-94を更新することだけを考えて渡航しないよう、ご留意ください。 L-1A、L-1Bビザ保持者の配偶者 (L-2 配偶者) L-1A、L-1Bビザ保持者の配偶者にも同じルールが適用されるようになりました。「Class of Admission」のステータスがL2Sと表記されているI-94が発給されていれば、米国で就労するための労働許可証を申請する必要はありません。 前述した通り、2022年1月31日よりも前から米国に滞在していた方で、新表記の I-94が必要な方は、米国に飛行機で再入国する必要があります。 有効な労働許可証をお持ちの方 現在、有効な労働許可証をお持ちの方は、そのまま労働を続けることができます。では、労働許可証の有効期限が迫り、延長する必要があるものの、配偶者用 (新表記) のI-94を所持していない、という場合はどうしたら良いでしょうか。この場合、I-94の期限があり、なおかつ、労働許可証が有効であるうちに労働許可証の延長申請をすれば、540日、または、 I-94の有効期限のいずれか早い期日まで、労働許可証の有効期限が自動的に延長されるようになりました。 労働する予定のない方 労働許可証や新表記のI-94は、EやLビザの配偶者ステータスで、かつ、労働を希望する方々にとって重要であることを理解しておきましょう。なお、米国で就労の予定がなければ、配偶者指定のない従来のI-94でも何ら影響はなく、これまで通り、その有効期限まで合法的な滞在資格が認められています。 ビザステータスの確認 このたびの労働許可証をめぐる変更点は喜ばしい進歩ですが、まずは、ご自身のビザステータスをよく理解し、常に確認することがとても大事です。 […]

米国市民権テストを受ける前に知っておくべき4つのポイント

米国市民権を取得するまでには、多くの時間と労力が掛かり、その長い道のりの最終ステップでは、帰化(市民権)テストがあります。ようやくテストの時点まで辿り着いたのですから、必ず合格するよう、十分な準備をした上で、テストに臨みたいものです。 それでは、テストを受ける前には、何を知っておくべきでしょうか? テストの把握 実際のテスト問題を見ることはできませんが、市民権テストは、すべての申請者に公平になるよう同じ形式が取られており、「英語テスト」と「公民テスト」の2つのパートで構成されています。それぞれの内容がどのようなものかを理解し、具体的に何を準備すれば良いかを知ることが大事です。 英語テストでは、英語の読み・書き・会話力が試されます。英語を概ね理解していれば良いのですが、そのレベルとしては、基本的な理解以上のことは求められません。つまり、若者向けの本や、むしろ子ども向けの本を読むことでも十分に対策になります。 公民テストでは、アメリカの歴史と政治についての理解度が試されます。巷では、市民権テスト対策用のクラスなどもありますが、インターネットを利用しても、十分に学ぶことが出来ます。テストでは、最大10問の米国の歴史・政治に関する質問が出題されますが、その質問のサンプルは、こちらをご参照ください。なお、65歳以上であれば、出題内容が限定されますので、こちらをご参照ください。 模擬テストの活用 前出のリンク先で質問サンプルを参照できるように、インターネット上では、テストのサンプルも簡単に見つけることが出来ます。勉強の方向性や成果を確認するためにも、本番のテスト前に、こうした模擬テストを活用することを強くお奨めします。 米国移民局も、質問サンプルと回答、学習教材の2020年度版(最新版)をこちらで公開していますし、また、こちらのサイトでは、模擬テストを受けることが出来ますので、ぜひご活用ください。 個々の状況に応じたテスト内容 市民権テストで問われる内容は、一律で同じというわけではありません。移民法によれば、一定の年齢以上の申請者は容易なテストを要求できる、とされていますし、年齢の他にも、経歴、米国での居住期間、学歴は、テストの出題内容を左右する要因となります。 ですが、市民権テストは、市民権をなるべく取得させないことを目的に設けられているのではありません。むしろ、様々な例外や便宜が図られていますので、詳しくはこちらをご参照ください。 ほぼ全員合格 あまりストレスを貯めずに、落ち着いてテストに臨みましょう。上述したように、申請者に対して配慮がなされていることから、このテストの合格率は91%と高いのです。テストの内容を理解し、それに向けた対策を取れば、市民権テストに合格することは、それほど難しいことではありません。 ブランドン・バルボ法律事務所では、米国市民権取得のお手伝いも致します。どうぞ、お気軽にお問い合わせください。

米国外への渡航がもたらす永住権喪失のリスク

米国外で長期に渡って滞在したために、永住権を喪失するという永住権保持者を、昨今、多く見受けるようになりました。海外へ出国したものの、パンデミック下での渡航制限により、予定通りに米国へ戻れず、米国外での滞在が長期化、その結果、永住権喪失、という厳しい状況に陥っているためです。 永住権保持者が米国外に長期で滞在する場合には、米国を出国する “前” に永住権を守るための対策を行うか、米国を出国した “後” に永住権を取り戻すかが考えられますが、そもそも、米国外への渡航が180日以内であれば、通常、何の問題もありません。 問題となるのは、渡航期間が180日を超える場合(特に1年を超える場合)です。この場合は、たとえ、長年米国に居住し、家族や地域社会とのつながりが十分にある人であっても、必ず何かしらの対策を講じなくてはなりません。 米国を出国する “前” の対策とは、永住権を守るための再入国許可証 (Re-Entry Permit) を申請することです。再入国許可証の申請では、指紋採取のプロセスがありますが、パンデミックの影響でプロセスに大幅な遅延が起きていること、遅延にも関わらず、指紋採取のプロセスを省略するといった特別な措置は発表されていないことから、指紋採取の通知書を受け取るまでに数か月を要する場合があります。また、指紋採取は米国内でしか手続きができませんので、出国前にはプロセスを完了させなくてはなりません。よって、「出国前」とは、出国直前ではなく、出国予定の何か月も前を意味していますので、時間に余裕をもって申請するよう、心掛けてください。 一方、米国出国前に再入国許可証を申請しなかった場合(または、許可証の有効期限を越えて米国外に滞在した場合)でも、出来ることはまだあります。それが、帰国居住者ビザ(Returning Resident (SB-1) Immigrant Visa)の申請です。この申請では「米国に戻る意思を放棄していない」「米国外での滞在中、やむを得ない事情で米国へ戻ることが出来なかった」という点を証明しなくてはなりません。それを裏付ける書類としては、米国へ戻るフライトがキャンセルされたことがわかる書類、渡航を阻むほどのロックダウンや天候の悪さに見舞われた情報を提示する、などが考えられます。この申請も完了するまでに数ヶ月を要する可能性がありますが、長期滞在の理由を証明でき、無事に承認を得られるよう、日頃から、証拠書類を収集、保管しておくことが大事です。 いずれのプロセスも時間を要しますし、戸惑うこともあるかもしれませんが、永住権保持者の資格を失わないためには、対策方法を予め、正しく理解しておく必要があります。永住権の維持に関するご質問は、お気軽に、ブランドン・バルボ法律事務所まで、お問い合わせください。

中小企業やレストラン業に求められる米国大使館の新たな方針

昨今、中小企業のオーナーでもあるビザ保持者にとって、ビザの更新はより厳しいものになりつつあります。というのも、米国大使館が新たな方針に則り、その企業で働く、すべての従業員に目を向けるようになったためです。これにより、ビザを無事に更新するためには、すべての従業員が米国で合法的な労働資格を有することを証明しなくてはならないかもしれません。 この新たな方針は1年ほど前から導入された様子で、 今後も継続されることが予想されます。特に、経営者自身がビザを更新する際や、事業拡大のために米国外から人材を呼び寄せようとする際に尋ねられる傾向にありますが、実際に要請を受けているのは、大企業ではなく、中小企業のみのように見受けられます。このことから、中小企業の他にも、例えば、スタートアップ企業、旅行会社、レストランといった業種などに、影響が及びやすい内容と言えそうです。 例えば、経営者がビザを更新する際に、全従業員が合法的な労働資格を有することを証明するよう、求められたとします。その場合、米国大使館は、給与台帳に載っている全従業員のForm I-9だけでなく、各従業員の身分証明書や米国での労働資格を証明する書類の提示も求めます。万一、労働資格のない従業員がいる場合、自身のビザを取得するためには、その従業員を解雇しなければならないかもしれません。大事な従業員を失えば、オペレーションに影響が出るでしょうから、苦渋の決断となることは間違いありません。 米国大使館の新たな要件に備えるためにも、特に中小企業やレストランなどの経営者は、すべての従業員の合法的な労働資格の有無を確認しておきましょう。また、就労ビザを持つ従業員については、雇用時には有効であったForm I-94やビザステッカーが、以来、適切に更新されておらず、そのことがビジネスに陰りを落とすことも大いにあり得ます。よって、それら従業員のForm I-94の期限やビザの更新時期を把握し、かつ、期限内に適切に更新されているかを確認しておく必要もあります。 この新たな方針により、経営者のビザの更新手続きには、以前よりも時間が掛かっていますので、早めに手続きを進めるよう心掛けてください。そして、米国大使館に尋ねられても確実に返答できるよう、全従業員の合法的な労働資格やビザステータスの状況について把握しておいてください。 私たちは、中小企業やレストラン業の味方です。今回のブログでは、今後もビジネスが発展することを願い、米国大使館での最近の動向をお知らせいたしました。こちらの内容に関する詳細やご質問、および、ビザに関するご相談は、ブランドン・バルボ法律事務所まで、お気軽にお問い合わせください。

Eビザ保持者のForm I-94を延長する方法

もしも、Form I-94の有効期限が失効直前であることに気づいた場合、どうしたらよいのでしょう? Form I-94とは、米国入国管理局 (CBP / the U.S. Customs and Border Protection) から発給される正式な入国記録で、米国での滞在資格(ステータス)や滞在期限を証明するものです。以前の記事でも述べましたが、「Form I-94の有効期限を確認し忘れ、気づいた時には失効間近だった」というのは、よくある例です。そうした失効間近のForm I-94を延長するためには、飛行機で米国外へ出国するか、米国移民局へステータスの延長 (I-94の延長) 申請をするか、の2つの方法があります。 とはいえ、どちらの方法も難点があります。米国移民局への延長申請は、承認されるまでに長い時間を要する可能性がありますし、申請料や手数料などの費用も相応に掛かります。一方、米国から飛行機で出国するというと、母国への一時帰国を考える方が多いですが、仕事の都合など、諸々の調整も必要でしょうし、渡航費用もかさむでしょう。 ところが、有効なビザステッカーと、有効期限が十分にあるパスポートがあれば、母国以外の国や、隣接する国へ渡航し、米国に再入国する際、CBPに新しいForm I-94の発給を要請することができるのです。米国に隣接しているメキシコとカナダ、そして、 パナマ、コスタリカ、バハマは、母国以外の渡航先のオプションとして考えられる国々です。これらの国々へのフライトは、アジアやヨーロッパにある母国へのフライト、もしくは、米国移民局への延長申請に掛かる費用と比べれば、はるかに安価に抑えられるでしょう。 注意点としては、メキシコやカナダから米国へ再入国する場合、新しいForm I-94を発給してくれるかどうかは、入国地のCBP審査官の判断に委ねられており、成功する保証はない、という点です。ですが、メキシコやカナダ以外の国から米国へ再入国する場合、コスタリカとパナマ、その次にバハマが、成功率の高い傾向にあります。 これはネット上ではあまり見受けられない方法ですが、失効間近のI-94を延長しなくてはならない、非常に厳しい状況に陥った方々にとって、合理的かつ合法的な方法なのです。また、母国へ行くよりも短期間で済む傾向にありますから、雇用主にとってもメリットのある方法と言えます。なお、この方法は、Eビザ保持者にのみ有効です。Eビザには「米国に入国するたびに、入国日から最長2年間のForm I-94が発給される」という特性があるためです。 Form I-94の有効期限が迫っている場合、新しいForm I-94を入手するために、わざわざ母国に行くのではなく、他国へ飛行機で行く、という選択肢があることを忘れないでください。新しいForm I-94が必ずしも発給される保証はありませんが、多くの場合で成功しています。それぞれのニーズに応じ、どのオプションが最適かの判断をするお手伝いをしておりますので、Form I-94についてお困りでしたら、ブランドン・バルボ法律事務所まで、お気軽にお問い合わせください。

配偶者の就労に関する新しいポリシー

2021年11月12日、米国移民局は、特定のビザホルダーの配偶者が、米国内で就労する際の新たなガイダンスを発表しました。これは、配偶者が労働する際に必要とされる労働許可証(EAD)に関するもので、労働許可証の有無をめぐって起きた集団訴訟の結果が、実に2002年から実施されてきた従来のポリシーを大幅に変更させることになりました。 今回のポリシー変更は、最近発表されたばかりですので、今後さらなる詳しい情報が届くことと思いますが、ここでは、現時点で分かっている内容について記載します。なお、変更内容は、新ポリシーが適用されるビザクラスごとに異なりますので、該当する方は、以下の各項目をご参照ください。 H-4 配偶者 Hビザ保持者の配偶者(H-4配偶者)は、労働許可証が失効する前に更新申請を行うと、その労働許可証の有効期限が自動的に延長されるようになります。ただし、自動延長される期間は、更新申請が承認または却下される日、Form I-94の期限日、あるいは、労働許可証の失効日から180日まで、いずれか早い日までとなります。 この自動延長された労働許可証で働く場合には、有効なForm I-94、 (c26) というカテゴリが記載されている、更新申請の受領通知書 (Form I-797/Receipt Notice)、そして、カテゴリ (c26) が明記されている、失効した労働許可証を提示する必要があります。この内容は、2021年11月12日より、すでに施行されています。 E-1/E-2配偶者とL-2配偶者 E-1/E-2ビザ保持者の配偶者(E-1/E-2配偶者)、および、Lビザ保持者の配偶者(L-2配偶者)は、この新ポリシーにより、労働許可証を申請する必要がなくなります。E-1/E-2配偶者、および、L-2配偶者には、そのステータスそのものに、労働許可が付随しており、主たるEビザ/ Lビザ保持者と同様、Form I-94を提示するだけで、米国内で働くことができる、ということになります。 しかしながら、この新ポリシーは現在すでに有効ではあるものの、完全に導入されるためには、変更点を反映させた規制やシステムなど、連邦政府機関による各種調整が必要です。例えば、社会保障庁は、社会保障番号を取得できる資格内容を更新したり、米国移民局は、Eビザ/ Lビザ保持者の配偶者と子どもを区別したForm I-94の発給を開始しなくてはなりません。集団訴訟の和解合意書によれば、米国移民局は2022年3月10日までに、これらの調整を完了させること、と記載されています。 このような状況を受け、「やはり有効な労働許可証を持っておく方が安全」と考える人も多いでしょう。新ポリシー下では、労働許可証が失効する前に更新申請を行うと、その労働許可証の有効期限が自動的に延長されるようになります。ただし、自動延長される期間は、更新申請が承認または却下される日、Form I-94の期限日、あるいは、労働許可証の失効日から180日まで、いずれか早い日までとなります。 自動延長された労働許可証で働く場合には、以下の書類を提示してください。 E-1/E-2配偶者 有効なForm I-94 (a17) というカテゴリが記載されている、更新申請の受領通知書 (Form I-797/Receipt […]

パスポートの有効期限とForm I-94の有効期限

外国人が米国に入国する際には、空港などにいる税関・国境警備局 (CBP / the U.S. Customs and Border Protection)の入国審査官がパスポートにスタンプを押印しますが、このスタンプはForm I-94(出入国記録)のシンボル的な役割を果たしています。Form I-94とは、米国に滞在する外国人にとって、不可欠、かつ、大変重要な意味を持つもので、米国での滞在期限を証明するものでもあります。よって、Form I-94の有効期限が失効する前に延長申請を手続きするか、米国から出国するか、外国人には、何かしらのアクションを取らなくてはならない義務があります。  Form I-94の有効期限を自ら管理することがいかに重要であるかについては、過去に記述したことがありますので、そちらも併せてご覧ください。 Form I-94の有効期限は、ビザの種類によって決まります。法律上、CBPの入国審査官は、最長、ビザの有効期限まで滞在期間を与えることができる権限を持っていますが、言い換えれば、数ヶ月から数年まで、入国審査官が許可する滞在期間はどの期間でもなり得る、ということになります。 “できる “からと言って、必ずしも最長の期間を与えてくれる保証はないわけですから、外国人は「最長の滞在期間をもらえて当然」と思い込んではいけません。 その例のひとつが、パスポートの有効期限がビザの期間よりも短い場合です。その場合、パスポートの有効期限に合わせてForm I-94の期限も設定されることが非常に多いため、必ず、CBPのウェブサイトにアクセスし、Form I-94の有効期限を確認する必要があります。弊社には、パスポートの失効日が迫り、それと共にForm I-94も同様に失効することに気づいた方々から、よくお問合せがあるのですが、それだけよくある落とし穴なのです。 また、米国での滞在に家族を帯同する場合も注意が必要です。パスポートの有効期限が家族それぞれで異なる場合、家族全員が同じビザ種であるにも関わらず、Form I-94の有効期限もそれぞれで異なる場合があります。「家族全員、同じ期限だろう」と思い込み、実は、家族の誰かの滞在期限がすでに失効していたことに後々まで気づかなかった、という例も多く見受けられます。 これからの季節、年末年始の休暇を海外で過ごす方も多いでしょう。こうした時期に、Form I-94の有効期限に関する問題がよく起こっていますので、くれぐれもご注意ください。パンデミックにより、パスポートの更新手続きは通常よりも時間がかかっています。まずは、パスポートの有効期限を確認、そして、失効の時期が近い場合は、早めに更新の手続きを済ませてください。 Form I-94の有効期限は、まずは空港で、CBPの入国審査官がパスポート上に押印するスタンプの内容をその場で確認すること、その後入国してから、CBPのウェブサイトでForm I-94も必ず確認してください。パスポートの有効期限が近ければ、Form I-94の有効期限も近い可能性があります。Form I-94に関するご相談は、ブランドン・バルボ法律事務所まで、どうぞ、お気軽にお問い合わせください。

永住権申請:最終面接はアメリカ、それとも母国で受けるべき? 選択のポイントとは

永住権申請では、プロセスの最後に実施される面接を、米国内にある米国移民局で受けるか、母国にある米国大使館で受けるかを選ぶことができます。米国で面接を受ける方法を在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status / AOS)、母国で面接を受ける方法を移民ビザ申請 (Consular Processing / CP)といいます。 どちらの方法で面接を受けるかを決める際、考慮すべきポイントがいくつかありますが、単に場所だけの問題ではなく、ビザの種類、現在の居住地、母国の違いによっても異なります。ここでは、見落とされがちなポイントをいくつかご紹介します。  まず、永住権申請中に米国外への渡航が可能かどうかという点が挙げられます。AOS、すなわち米国内で面接を受ける方法を選択した場合、国外へ出国するためには、米国移民局から渡航許可証の発給を受ける必要があります。ですが、発給までには申請から最大6ヶ月ほどかかることから、長期に渡って米国内に足止めされることを懸念し、申請中も米国外への渡航が制限されないよう、AOS ではなく、CPを選ぶ人もいます。 次に、プロセスにかかる時間もポイントとなります。2020年始めの時点では、AOSは約1年、CPは約6ヶ月が目安でした。その後、パンデミックにより、2020年3月から2021年3月までCPのプロセスが止まりました。現在でも、手続きに遅れが出ており、特に中国やインドといった永住権の申請者の多い国では大幅に滞っています。2021年10月現在、AOSのプロセスには約1年、CPには最大で2年かかると推測されています。 また、米国政府の結論に異議を申し立てることができるかどうかという点も重要なポイントです。AOSでは、米国内で面接を受けた結果、永住権の申請が却下された場合でも、連邦裁判所へ不服を申し立てることができます。一方のCPでは、母国の米国大使館で面接を受け、申請が却下された場合、それは最終決定となり、異議を申し立てることはできません。 ところで、現在、米国移民局は、雇用主がスポンサーとなる永住権申請の約90%のAOSケースに対して、面接を免除しています。CPではこのような措置はありませんので、雇用ベースの永住権申請を進める申請者にとっては、AOSかCPかの決め手となる材料かもしれません。ただし、この「面接免除」は、今だけの措置で、長くは続かない可能性も大いにありますので、注意が必要です。こうした、米国政府のその時々のプロセスの仕方、方針、動向もひとつの判断材料になるわけですが、例えば、トランプ政権下では母国での面接を希望する申請者が多く見られ、一方、現在のバイデン政権下では、流れがその逆になっています。当局の動きに合わせて、申請者も動きを変えていることがわかる例と言えます。 米国か、母国での面接か—–。当事務所では、申請者それぞれの状況に応じたアドバイスをしていますが、最終的には、個人の判断に委ねられています。どちらが正しい、ということではありませんので、最適と考える方法を選択してください。 面接場所を選択する判断にお困りの場合は、当事務所までお気軽にお問合せください。個々の状況を詳しく伺った上で、アドバイスをさせていただきます。

グリーンカードと運転免許証の更新

グリーンカードと同様、外国人にとって運転免許証の取得は大変手間のかかるもので、残念ながら、更新をする際も同様に、いくらか手順を踏まなくてはならないことがあります。運転免許証の更新手続きは州によって異なり、こちらで説明するのは、一般的な内容ですので、個々の状況については当事務所までご相談ください。 さて、ほとんどの州では、永住権保持者の運転免許証はグリーンカードの有効期限と同じ有効期限で発給されます。 そして、グリーンカードの期限が失効する際には、更新(または再発給)のための申請書Form I-90を提出しますが、申請すれば自動的に新しいグリーンカードが届くわけではなく、米国移民局の審査を経て、ようやくグリーンカードが発給されます。 ここで問題になるのが、運転免許証の更新です。多くの場合、運転免許証の有効期限はグリーンカードの有効期限に合わせて設定されるため、運転免許証の更新時には、すでに更新されたグリーンカードが必要、すなわち、運転免許証の更新前には新しいグリーンカードが発給されている必要がある、ということになります。 そのため、運転免許証の更新を見据え、まずはグリーンカードの有効期限6カ月前にForm I-90を提出するといった具合に、以前は予めプランする必要がありました。中には、上手くプランが出来ず、結果的にしばらくの間、運転が出来なくなった、という事例も少なからずあったものです。 ところが、2021年1月に発表された米国移民局の新しいポリシーにより、この問題は大いに改善されました。Form I-90を提出した申請者には、2週間程度で受領通知書 (Form I-797) が発行されますが、このForm I-797があれば、現在手元にあるグリーンカードの有効期限が丸1年延長されるようになったのです。 例えば、すでにグリーンカードの期限が失効していても、Form I-797とを併せ持つことで、連邦政府によって有効期限1年延長が認められているわけですから、通常通り、労働許可証や法的な身分証明証として使用できる上、運転免許証の更新にも使用できるわけです。これまでの運転免許証の更新は、州によってはForm I-90の受領通知書を提示すれば更新が出来たり、すでに更新されたグリーンカードを提示しないと更新が出来なかったりと様々でしたから、これは非常にポジティブな変化です。 運転免許証の更新が必要な永住権保持者の皆さんは、まずはForm I-90を提出しましょう。Form I-90の受領通知書 (Form I-797) を用い、新しいグリーンカードを待つ間でも運転免許証の更新をしてください。 グリーンカードや運転免許証の更新に関するご質問は、ブランドン・バルボ法律事務所まで、どうぞお気軽にお問合せください。