トランプ政権時代の減税措置が段階的に終了: E-2ビザ企業の会計処理への影響

2017年、ドナルド・トランプ前大統領は、米国税制改革法案(Tax Cuts and Jobs Act: TCJA)に署名をしました。この法案には、企業が受けられた優遇措置のひとつに、減価償却費に関するものがあります。法案成立前、企業が固定資産の費用を計上する場合は、その資産の価値の減少を見積もり、耐用年数に応じて分割、それを減価償却費として会計処理をしていましたが、この法案により、企業は対象となる固定資産の減価償却費を即時に全額計上することができるようになりました。しかしながら、この措置は徐々に縮減され、いずれは廃止されることになります。

内国歳入法第 168(k)条により、E-2ビザ企業を含む多くの企業に認められた「即時償却」は、2023年以降、毎年20%ずつ段階的に縮減され、2027年以降は0%となり、最終的には税制改革法案が成立する前の状況に戻ることになります。次の各年1月1日以降に使用が開始される固定資産に対し、減価償却費を計上できる割合は、以下の通りです。

  • 2023 – 80%
  • 2024 – 60%
  • 2025 – 40%
  • 2026 – 20%
  • 2027年以降 – 0%

法改正により、これらの割合が変更される可能性もありますが、E-2ビザ企業は、固定資産の減価償却費の計上は上記の割合で減少していくものとし、対策を考えたほうが良さそうです。なお、2017年9月28日から2022年12月31日までの間に使い始めた固定資産については、まだ100%の減価償却費を一度に計上することができます。

長期の減価償却は、納税額を高くしてしまうため、この措置の廃止は、企業の利益や収益に大きな影響を与えることになります。この措置では、例えば、2022年に20万ドルの高額な固定資産を購入、すぐに使用を開始した場合、予想される減価償却費の合計を一度に計上することができました。すなわち、耐用年数 (10年) として、その固定資産が50% (10万ドル) 減価償却されると見込めば、2022年度の税務申告時に、10万ドルの経費として会計処理できたのです。

ところが、同じ固定資産を購入、仮に2023年2月まで使用を開始しなかった場合、2023年度の税務申告においては、予想される減価償却費全体の80%までしか計上できません。つまり、見込まれる減価償却の額が10万ドルの場合、8万ドルを2023年度に計上し、残りの2万ドルはその後、数年に分けて計上していくことになります。

そして、同じ固定資産を2027年1月1日以降に使用を開始する場合、実際の減価償却費のみ計上でき、予想される減価償却費を追加で計上することはできなくなります。

毎会計年度、固定資産の価値がより高い状態で保たれることになれば、米国に投資するE-2ビザ企業の会計処理に大きな影響を与えることでしょう。当初、10万ドルの価値として減価償却が見込まれた固定資産は、減価償却が完了するまで、より高い価値を保持することになってしまうのです。

米国税法に基づいて事業を行う企業は、このように、会計、利益・損失に対して影響を与える法案や規則の変更について、十分に理解しておく必要があります。米国でビジネスを展開される企業で、これらの内容、または、米国移民法についてのご質問がある方は、ブランドン・バルボ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

By Brandon Valvo