グレースピリオド ― 60日間の出国猶予期間

米国で新たな生活を始めるためには、ビザの取得など多大なる労力を要します。長い道のりを経て、プロセスが無事に完了した暁には、「ようやく米国での新たなキャリア、新たな生活が始められる」と、安堵することでしょう。

しかし、よくよく練られたプランでも、残念ながら、常に期待通りに物事が進むとは限りません。例えば、従業員が新たなチャンスを求めて退職するのと同じように、雇用主はいつでも従業員を解雇することができるわけですから、決して雇用の安定は保証されていません。そこで、今回は、万一解雇された場合、すぐに米国を出国しなくてはならないのかどうか、知っておくべき重要なポイントについて述べてまいります。

2017年1月より、米国移民局はほとんどの就労ビザ保持者に対し、「グレースピリオド」という、60日間の出国猶予期間を認めるようになりました。これは、雇用が終了した瞬間にステータス違反とならないよう、ビザ保持者を保護する目的で設けられた措置です。よって、解雇=即出国、とパニックに陥る必要はありません。

対象となるビザクラス

この60日間のグレースピリオドは、全てのクラスの就労ビザ保持者に与えられるものではありません。雇用終了後、短期間の猶予しか与えられないビザクラスもありますので、まずはご自身が60日間猶予の対象であるか、確認してください。

60日間のグレースピリオドが認められている就労ビザクラスは以下のとおりで、H-2B、H-3、P のビザ保持者には 60 日の猶予期間は認められていませんので、ご留意ください。

– E-1、E-2、E-3

– H-1B、H-1B1

– L-1

– O-1

– TN

グレースピリオドは、認められた期間につき一度だけ利用することが出来ます。例えば、現在のビザクラスのステータスを延長するためにグレースピリオドを利用した場合、いずれは出国し、改めて入国しない限りは、新たなグレースピリオドの付与対象とはなりません。また、グレースピリオド中に米国を出国した場合は、残りの日数に関わらず、猶予期間は終了します。

ところで、グレースピリオドの期間中に、Form I-94 やForm  I-797 が失効する場合は、猶予期間は60日間ではありませんので、ご注意ください。例えば、Form I-94 やForm  I-797の有効期限日が、雇用終了日から15日後であった場合、猶予期間は60日間ではなく15日間となり、その間にステータスの延長や変更申請、または米国から出国しなくてはなりません。

グレースピリオドの要件

グレースピリオド中も、合法的に滞在することはできますが、米国移民局によって認められていない就労はできません。そもそもグレースピリオドとは、新たな雇用の確保、ステータス延長や変更申請の準備等のために与えられている期間です。よって、60日の間に、以下のいずれかのアクションを起こす必要があり、グレースピリオドの期間終了までにアクションを起こさなかった場合は、ステータスは取り消され、米国に滞在する資格を失います。

  • 新たな雇用主の元で就労するための申請をする
  • 猶予期間が終了する前に、米国から出国する計画を立てる
  • 他のビザクラスへステータスを変更するための申請をする

今後も米国で労働、生活を継続するためには、新たな雇用を見つけることが最優先事項ですが、同時に、新たな雇用主がどのようなビザクラスをスポンサーできるのかも必ず確認してください。

もし、配偶者が他のビザクラスを保持している場合であれば、配偶者を通じてステータス変更を申請することも出来ます。

ブランドン・バルボ法律事務所は、米国ビジネス移民の専門家です。米国移民法に関するご相談は、いつでもお気軽に弊社までお問い合わせください。

By Brandon Valvo