米国移民局(USCIS)は、現在、申請プロセスのデジタル化に取り組んでおり、まずは、就労ビザ(H、E、L、O、Rカテゴリーを含む)、および、米国永住権について、オンラインで申請できるよう、準備を進めています。これにより、審査の効率化に、大きな変化をもたらすことが予想されます。 デジタル申請システムへ正式に移行する最初のビザカテゴリーは、H-1Bビザです。今年2月からオンライン化が始まり、H-1Bビザの抽選で選ばれた申請者は、初めてオンラインで申請できることになります。 弊所では、請願書の提出、付随する証拠書類のアップロード、申請費のオンライン決済など、この新たな環境に対応できるよう、すでに準備をしています。このデジタル申請システムは初期段階のため、まだまだ課題はあるものの、プロセスの効率化において、今後、大きな期待が持てると言えそうです。 なぜ、このような変更が? 就労ビザ申請に対する、完全デジタル化へ移行は、突如決定されたものではなく、より効率的かつ合理的なシステムを必要とする米国移民局が、着々と計画してきたものです。米国移民局は、現在、歴史的なバックログなどの課題を抱えており、申請や審査のプロセスを迅速に効率良く行うことで、より良いサービスの提供を強化したい、としています。 最近の米国移民局のプレゼンによれば、デジタル化への移行は、職員のデータ入力の手間を省くだけでなく、就労ビザの申請を行う企業と弁護士の連携を効率化させる目的があることも強調していました。確かに、クライアントの方々や私たちにとって、スムーズな連携作業は非常に重要な要素と言えます。 メリットを最大限に活かす 米国移民局のデジタル申請システムに、主要な要素となる「Company Groups」という、就労ビザを申請する企業と弁護士の双方がオンライン申請に取り組めるよう設計されたシステムが導入されました。これにより、柔軟性、企業と弁護士の協業の促進、効率的なコミュニケーションを期待できるようになります。 一方で、デジタル化へのメリットを最大限に利用するためには、この「Company Groups」の構成や仕組みを正しく理解し、細心の注意を払う必要があります。「Company Groups」には、後から情報を変更できない面もあり、注意深く、適切に設定されていることを確認しなくてはなりません。よって、企業と弁護士が協力しながら、計画的に進めることが大変重要です。 新しいシステムへの期待 デジタル申請システムへの移行は、移民制度を必要とする企業、申請者とその家族、専門家にとって、新たな可能性を切り開く、と言えそうです。ただし、プロセスが合理化される点は非常に魅力的ですが、歴史的なバックログ、プロセス期間の長期化を引き起こしてきた米国移民局のこれまでの姿勢を考えると、慎重に対応していく必要がありそうです。 ブランドン・バルボ法律事務所では、クライアントの皆様が、デジタル申請システムを最大限に利用するための体制を整えています。請願書や証拠書類の提出から、申請費の決済まで、すべてオンライン上で管理し、より費用対効果の高いサービスを提供いたします。ご質問がございましたら、お気軽に弊所までお問い合わせください。
現在の永住権申請では、案件数のバックログ、プロセス期間の長期化、その他の課題により、米国内でのステータスや、米国外への自由な渡航に、大きなリスクを伴う状況が続いています。米国移民局が抱える課題については、最近のブログでも述べましたが、これらの課題が、企業、移民、そして、その家族と、どれだけ広範囲に及んで、影響を与えているかを理解することは非常に大事です。 今回は、現在、特に大きな課題となっている2点について述べます。一つ目は、H・Lビザ以外のビザ保持者が、米国内で永住権を申請する場合の渡航許可証の申請、二つ目は、永住権保持者の再入国許可証 (Re-Entry Permit) の申請です。 長く複雑なAdjustment of Status (AOS) 永住権の申請方法のひとつに、米国で面接を受ける方法(在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status / AOS) がありますが、H・Lビザ以外のビザ保持者がAOS申請する場合、審査中も、合法的に米国で働くための労働許可証、米国外へ渡航するための渡航許可証を取得する必要があります。渡航許可証が発給されれば、AOS審査中でも米国外へ自由に渡航出来るようになりますが、この渡航許可証の発給までに、現在、9~10ヶ月も掛かっています。 このため、長期間、米国から出国出来ない状況を見据え、母国にいる家族や、海外出張の業務など、米国外へ渡航する以外の方法で対処、対応出来るよう、事前準備が必要となります。仮に、渡航許可証が発給される前に米国を出国した場合、AOS申請そのものが却下される可能性がありますから、十分にお気をつけください。 なお、HまたはLビザ保持者の場合は、AOS申請後もH・Lビザで渡航が出来るため、渡航許可証を取得する必要はありません。 永住権喪失のリスク 永住権保持者が、仕事やその他の事情により、米国外に長期で滞在しなくてはならない場合、再入国のリスクが生じます。米国当局は、永住権保持者が米国外で、1年間連続して滞在し続けた場合、永住権を放棄した、と見做します。このため、例えば、米国外に3年間の赴任辞令が下りたのであれば、永住権を守るため、米国を離れる前に、再入国許可証を申請する必要があります。 再入国許可証の手続きは、以前であれば、3ヶ月ほどで完了していたところ、現在は完了するまでに約1年半も掛かっています。また、申請する際には、米国移民局が申請書類を受領する時点で、申請者は物理的に米国に滞在していなくてはなりません。そのため、申請のタイミングなど、事前にしっかりと計画を立てる必要があります。再入国許可証の発給を待たずに、米国外での滞在を始めた場合、米国へ戻りたい時に、肝心の許可証が手元に未だないことから、再入国が出来なくなる可能性もあり、さらには、国外での滞在期間によっては、永住権放棄と見做され、永住権を喪失する危険性もあるのです。 ステータスの維持、そして、制限されない渡航のために 家族やビジネス、そして自分自身を守る最善の方法は、米国移民制度に起こりうる、あらゆる弊害に対し、予め備えることです。ですが、それを正しく理解することは、容易ではありません。ブランドン・バルボ法律事務所は、こうした問題に直面しても、乗り越えられるよう、法的な視点からのアドバイスを致します。移民法に関するご相談は、弊社まで、お気軽にお問い合わせください。
2024年1月30日、米国移民局(USCIS)は、移民申請に関するほぼ全ての申請料の大幅な値上げを発表しました。2024年4月1日より適用される新しい申請料は、すべての企業に大きな負担を強いるものとなっています。今回の発表は、昨年12月27日に発表された、プレミアム・プロセッシング・サービス(特急申請)の申請料値上げに追随する形となりました(こちらは2024年2月26日より適用)。 2024年1月の申請料値上げの発表 米国移民局は、隔年で実施される包括的な申請料見直しの結果、運営コストが大幅に上昇していると主張しています。その理由は多岐に渡るもので、人道支援プログラムの拡大、需要の増加、プロセス期間の長期化、職員の増員などを挙げています。また、予算削減により、岐路に立たされていることから、申請料を調整しなければ、サービスレベルや、プロセスへの効率は低下し続け、現状のバックログを鑑みると、プロセス完了までの待ち時間が更に長期化するとしています。 現行の申請料の調整、特定の申請に対する新たな申請料の導入、Form I-129請願書(非移民労働者のための請願書)に対する、ビザクラス別の申請料の設定、特定のフォームに対する受益者制限の設定など、広範囲に及ぶ変更が提案されましたが、移民局は、これらの変更が実施されなければ、申請者や請願者に対するサービス基準を十分に満たせないリスクが高まり、プロセス期間はより長期化し、さらなるバックログの原因にもなる、としています。 企業に対し、亡命プログラムへの支援を要求 外国人の就労ビザをサポートする際、その請願者となる雇用主は、Form I-129請願書を提出しますが、こちらの申請料が、次のように大幅に値上げされます。 H-1Bビザ従業員の場合、460ドルから780ドルへ、70%の値上げ。 L-1ビザ従業員の場合、460ドルから1,385ドルへ、200%の値上げ。 E-1/E-2/E-3ビザ従業員の場合、460ドルから1,015ドルへ、120%の値上げ。 さらに、これら申請料の値上げに加え、すべての非移民、および、移民申請をサポートする雇用主には、新たに追加導入される申請料が課せられることになりました。これが、亡命プログラム助成金への使途を目的とするAsylum Program Filing Fee (600ドル)です。 一方、フルタイムの従業員数が25人以下の企業では、申請料の値上げ率はやや低めに設定されています。 ブランドン・バルボ法律事務所は、米国移民情勢の変化が、申請者、および、企業に経済的な負担を与えることも認識しています。移民プロセスに関わる、こうした変化を乗り越えるためのガイダンスについては、弊社までお気軽にお問合せ下さい。