現在の永住権申請では、案件数のバックログ、プロセス期間の長期化、その他の課題により、米国内でのステータスや、米国外への自由な渡航に、大きなリスクを伴う状況が続いています。米国移民局が抱える課題については、最近のブログでも述べましたが、これらの課題が、企業、移民、そして、その家族と、どれだけ広範囲に及んで、影響を与えているかを理解することは非常に大事です。 今回は、現在、特に大きな課題となっている2点について述べます。一つ目は、H・Lビザ以外のビザ保持者が、米国内で永住権を申請する場合の渡航許可証の申請、二つ目は、永住権保持者の再入国許可証 (Re-Entry Permit) の申請です。 長く複雑なAdjustment of Status (AOS) 永住権の申請方法のひとつに、米国で面接を受ける方法(在留資格/ステータス変更 (Adjustment of Status / AOS) がありますが、H・Lビザ以外のビザ保持者がAOS申請する場合、審査中も、合法的に米国で働くための労働許可証、米国外へ渡航するための渡航許可証を取得する必要があります。渡航許可証が発給されれば、AOS審査中でも米国外へ自由に渡航出来るようになりますが、この渡航許可証の発給までに、現在、9~10ヶ月も掛かっています。 このため、長期間、米国から出国出来ない状況を見据え、母国にいる家族や、海外出張の業務など、米国外へ渡航する以外の方法で対処、対応出来るよう、事前準備が必要となります。仮に、渡航許可証が発給される前に米国を出国した場合、AOS申請そのものが却下される可能性がありますから、十分にお気をつけください。 なお、HまたはLビザ保持者の場合は、AOS申請後もH・Lビザで渡航が出来るため、渡航許可証を取得する必要はありません。 永住権喪失のリスク 永住権保持者が、仕事やその他の事情により、米国外に長期で滞在しなくてはならない場合、再入国のリスクが生じます。米国当局は、永住権保持者が米国外で、1年間連続して滞在し続けた場合、永住権を放棄した、と見做します。このため、例えば、米国外に3年間の赴任辞令が下りたのであれば、永住権を守るため、米国を離れる前に、再入国許可証を申請する必要があります。 再入国許可証の手続きは、以前であれば、3ヶ月ほどで完了していたところ、現在は完了するまでに約1年半も掛かっています。また、申請する際には、米国移民局が申請書類を受領する時点で、申請者は物理的に米国に滞在していなくてはなりません。そのため、申請のタイミングなど、事前にしっかりと計画を立てる必要があります。再入国許可証の発給を待たずに、米国外での滞在を始めた場合、米国へ戻りたい時に、肝心の許可証が手元に未だないことから、再入国が出来なくなる可能性もあり、さらには、国外での滞在期間によっては、永住権放棄と見做され、永住権を喪失する危険性もあるのです。 ステータスの維持、そして、制限されない渡航のために 家族やビジネス、そして自分自身を守る最善の方法は、米国移民制度に起こりうる、あらゆる弊害に対し、予め備えることです。ですが、それを正しく理解することは、容易ではありません。ブランドン・バルボ法律事務所は、こうした問題に直面しても、乗り越えられるよう、法的な視点からのアドバイスを致します。移民法に関するご相談は、弊社まで、お気軽にお問い合わせください。
2024年1月30日、米国移民局(USCIS)は、移民申請に関するほぼ全ての申請料の大幅な値上げを発表しました。2024年4月1日より適用される新しい申請料は、すべての企業に大きな負担を強いるものとなっています。今回の発表は、昨年12月27日に発表された、プレミアム・プロセッシング・サービス(特急申請)の申請料値上げに追随する形となりました(こちらは2024年2月26日より適用)。 2024年1月の申請料値上げの発表 米国移民局は、隔年で実施される包括的な申請料見直しの結果、運営コストが大幅に上昇していると主張しています。その理由は多岐に渡るもので、人道支援プログラムの拡大、需要の増加、プロセス期間の長期化、職員の増員などを挙げています。また、予算削減により、岐路に立たされていることから、申請料を調整しなければ、サービスレベルや、プロセスへの効率は低下し続け、現状のバックログを鑑みると、プロセス完了までの待ち時間が更に長期化するとしています。 現行の申請料の調整、特定の申請に対する新たな申請料の導入、Form I-129請願書(非移民労働者のための請願書)に対する、ビザクラス別の申請料の設定、特定のフォームに対する受益者制限の設定など、広範囲に及ぶ変更が提案されましたが、移民局は、これらの変更が実施されなければ、申請者や請願者に対するサービス基準を十分に満たせないリスクが高まり、プロセス期間はより長期化し、さらなるバックログの原因にもなる、としています。 企業に対し、亡命プログラムへの支援を要求 外国人の就労ビザをサポートする際、その請願者となる雇用主は、Form I-129請願書を提出しますが、こちらの申請料が、次のように大幅に値上げされます。 H-1Bビザ従業員の場合、460ドルから780ドルへ、70%の値上げ。 L-1ビザ従業員の場合、460ドルから1,385ドルへ、200%の値上げ。 E-1/E-2/E-3ビザ従業員の場合、460ドルから1,015ドルへ、120%の値上げ。 さらに、これら申請料の値上げに加え、すべての非移民、および、移民申請をサポートする雇用主には、新たに追加導入される申請料が課せられることになりました。これが、亡命プログラム助成金への使途を目的とするAsylum Program Filing Fee (600ドル)です。 一方、フルタイムの従業員数が25人以下の企業では、申請料の値上げ率はやや低めに設定されています。 ブランドン・バルボ法律事務所は、米国移民情勢の変化が、申請者、および、企業に経済的な負担を与えることも認識しています。移民プロセスに関わる、こうした変化を乗り越えるためのガイダンスについては、弊社までお気軽にお問合せ下さい。
移民法に関する明るい話題が届きました。今後、多くの永住権申請者へ発給される労働許可証の有効期間が2年から5年へ延長されます。米国移民局(USCIS)が発表した今回の変更は、就労に対する大きな助け舟となる、大変重要なニュースとなりました。 米国に合法的に居住しながら永住権を申請する場合、労働許可証を取得することができますが、以前、永住権申請の最終局面で、グリーンカードの承認はまだなのに、労働許可証の有効期限が迫っていることで、雇用継続への不安を強いられることがありました。ステータス変更の手続きにかかる期間が、労働許可証の有効期間である2年を上回り、永住権の申請中に就労資格を失う可能性があったのです。 この重大な問題を認識した米国移民局は、2023年第3四半期に、労働許可証の有効期間を5年へ延長するに至ったというわけです。 5年間有効の労働許可証 前述した通り、かつての2年間有効の労働許可証では、グリーンカード承認までの必要な期間をカバーしきれないことがしばしばありました。これは、申請者に過度のストレスを与えるだけでなく、申請者の労働力を要する雇用主にとっても大きな課題となっていました。 労働許可証の有効期間が5年へ延長されることは、その状況を大幅に改善し、雇用主、および、申請者双方へ安定をもたらします。雇用主はより安定した労働力を確保でき、申請者は労働許可証の期限に対するプレッシャーを感じずに働くことができるのです。それだけでなく、労働許可証の更新申請が減れば、多くの時間と労力を他の業務に費やせることから、相当な数の移民申請の滞留に悩む米国移民局にとっても救済効果があると言えます。 永住権制度のさらなる変更 今回の変更は、永住権申請の手続きにおいて、様々な改革が進む可能性を示唆しているかもしれません。ここ数年、申請者がより早い段階でステータス変更の申請を始められるよう、議員たちの間で話し合われてきました。 現状では、申請者がステータス変更を申請するためには、申請書類を提出する順番を待たなくてはなりません。例えば、申請者の多いインド国籍者がステータス変更の申請をできるまでには、10年以上もかかることもあり、その間に3回ものH-1ビザの更新が必要になるのです。 これを解消する改革案が実現すれば、このような負担は大幅に軽減され、今回の有効期間5年の労働許可証も、より効果的に利用されるでしょう。こうした案はあくまで推測の域を出ませんが、プロセス遅延の解消、移民労働者の地位保護、米国当局のプロセスの最適化へ向け、前向きな方向性を示しています。 最善の方法を選びましょう 変化し続ける米国移民法を理解するのは簡単なことではありません。ブランドン・バルボ法律事務所では、移民政策の最新動向について、常に目を配り、細心の注意を払っています。その上で、米国での滞在、および、就労資格を確保し、維持するための最適なオプションには何があるのか、何を選ぶべきかなど、情報のご提供や判断のお手伝いをしています。米国移民法に関するご質問は、どうぞ、当事務所までお気軽にお問い合わせください。